アイスクリーム業界のトレンド 2025-2026

アイスクリーム業界のトレンド 2025-2026

単価が上がっても、生活者はついてきた——2025-2026年、市販アイスは「価値消費」へ完全移行

どうも。アイスマン福留です。今回は、2025-2026シーズンのアイストレンドを記事にまとめてみました。

単価が上がっても、生活者はついてきた

これは僕の感覚だけで言っているのではありません。日本アイスクリーム協会が2025年6月に発表した実績では、2024年度(24年4月〜25年3月)の販売金額はメーカー出荷ベースで6,451億円、前年比106.1%で5年連続の過去最高を記録しています。リッター単価は2023年度の670円から2024年度は689円へと、19円も上がっています。それなのに販売物量は935,916kLで前年比103.1%、1994年の過去最高に次ぐ歴代2番目を記録してます。

値上げという逆風のなかで、量まで増える。嗜好品として異例の強さ。アイスクリームはまさに「キング・オブ・デザート」です。一世帯あたりの年間支出も2024年度に12,295円(前年比6.2%増)で過去最高、5年連続で1万円超え。物価高による値上がりだけでは、とても説明のつかない伸び。アイスはもはや「安価な癒し」を超えて、生活必需品の側へにじり寄ってきています。

今回はこの構造転換を軸に、7つのトレンドを実例で読み解いていきます。

① プレミアム化——夏のフルーツバーまで高級化

かつて、高単価帯といえば冬の濃厚チョコや贈答ギフトの領分でした。それが今では、夏向けのフルーツバーまで300円超えが当たり前になっています。

その象徴が、セブンプレミアムの「銀座千疋屋 まるでシャインマスカット」です。2025年11月25日発売、税込321円。「まるでシリーズ」は2013年生まれ・累計2億本超の看板商品で、銀座千疋屋とのコラボは2024年4月の「まるでクラウンメロン」から始まりました。僕が注目しているのは価格です。通常版の「まるでクラウンメロン」が213円だったのに対し、銀座千疋屋版は約50%もプレミアム化しています。それでも、ちゃんと売れる。ブランドの暖簾(のれん)が、価格への抵抗感を溶かしてしまうんですね。

冬の白くまも、高価格を据え置いたまま強さを見せています。「ホワイトチョコ大好きな白くま」は2026年2月にセブン限定でリニューアル、税込397円・245ml。原材料も包材もエネルギーコストも軒並み上がるなかで、初代から3年連続で397円を維持しているのは、むしろ企業努力として評価したいところです。製造はセリア・ロイル。同社は2025年12月に日清食品ホールディングスが株式の約68%を取得して子会社化しており、即席麺の巨人がアイス事業へ初参入するという、地殻変動の渦中にあります。2026年4月には「完全メシアサイーボウルアイス」を発売しました。これは来期以降、目が離せません。

そして高価格帯の天井をぐっと押し上げたのが、ハーゲンダッツの新シリーズ「スペシャリテジャポネ 和紅茶バタークリームケーキ」です。2025年12月にセブン限定・数量限定で登場、税込475円・102ml。和紅茶ソース、和紅茶アイス、バタークッキー入りのバターアイス、銀粉シュガーという4層構造で、ブランド史上初めて「和紅茶」を採用しました。通常のミニカップ(当時税込351円)より約35%も高い。コンビニアイスの店頭で500円が見えてきた——これは数年前なら、ちょっと考えられなかった光景です。

ちなみにハーゲンダッツ ジャパンは、この通常ミニカップ自体も2026年3月出荷分から税込351円→373円へ約6%値上げをしています。実際に値上げと利益が両立するのかを見守りたいところです。

構造的に見ると、高価格帯は明確にセブン-イレブンが牽引しています。PB(セブンプレミアム)の高級化戦略、銀座千疋屋やチョコレートバンクといった監修ブランドの囲い込み、そして数量限定による希少性の演出。コンビニという一番身近な売り場が「ご褒美売り場」へと役割を広げたこと。これが、夏のプレミアム化を可能にした最大の要因だと僕は考えています。

セブンプレミアム 銀座千疋屋 まるでシャインマスカット

② 体験型——「食べる行為」そのものをコンテンツ化

味だけでなく、「食べるプロセス」が特徴の商品が一気に増えました。

ハーゲンダッツの「SPOON CRUSH」(2023年春生まれ)は、薄いチョコをスプーンでパリッと割って、ソースがじゅわっとあふれる「パリじゅわ」体験が売りです。2025年3月には『あふれるベリー クッキー&クリーム』『あふれるショコラ 濃い抹茶』を各351円で期間限定発売し、ソースを改良してきました。しかも「冷凍庫から出して11分前後」という待ち時間まで設計し、CMで「待つ」ことそのものを演出。アイスに能動的な所作と待機時間を組み込む——これはもう、完全に「コンテンツ化」です。

2026年4月から全国発売した森永乳業「バリッチェ」も、分厚いチョコをスプーンでバリッと割ってから食べる話題の新体験カップアイスです。もともとは赤城乳業の「セルフクラッシュ」シリーズのような商品を想定していたそうですが、開発プロセスの中で、個食タイプのバリバリスタイルに行き着いたそうです。

さらに、森永製菓の「マミーレ<キャラメリックプディング>」も同じく体験型。2026年5月にコンビニ限定・期間限定で発売。冷凍下でも凍らない“つゆだく”のキャラメルソースを実現するために、なんと開発に約4年を費やし、製造方法で特許まで取得しているという力の入れようです。カスタードアイス・パリパリのホワイトチョコ・とろとろソースの3層を、食べ進めるごとに混ぜ絡めて味の変化を楽しむ設計になっています。同社は「倍速視聴の一般化や楽曲の短尺化など、情報接触のスピードが加速するなかで、変化やコントラストを『体験』として楽しむ嗜好が広がっている」と分析。Z世代的なメディア消費の変化を、アイスの構造設計にまで落とし込みました。体験型は単なるギミックではなく、可処分時間の奪い合いに対する、アイス側からの真剣なアプローチなんですね。

森永製菓 マミーレ キャラメリックプディング

③ 再解釈

セブンが、鹿児島発祥のご当地かき氷「白くま」を全国流通チャネルに乗せ、独自フレーバーで年中展開しているのは、見事な「編集力」だと思います。

白くまは鹿児島・天文館の「むじゃき」発祥とされる、本来はローカルな夏の氷菓です。それをセブンは、チョコミント・いちご・杏仁・宇治抹茶、さらに2026年は猫コラボの肉球型アイスまで、季節ごとに再解釈し続けています。ご当地の記号性は保ったまま、全国規模で別物に育てていく。レトロや郷土菓子を現代の文脈で編み直すこの動きは、シャトレーゼ「カジゴン」のレトロ怪獣パッケージにも通じるものがあります。懐かしさは、いま立派な“新しさ”の素材なのです。

セブンプレミアム ホワイトチョコ大好きな白くま

④ 韓国発——海外トレンドの伝わる速度が加速

韓国のヨーグルトトレンドが、ほとんどタイムラグなしに日本のコンビニ棚へ上陸しています。

セブンは韓国の人気トッピングヨーグルト「viyott(ビヨット)」と日本初の共同開発を行い、「ビヨットヨーグルトデザートアイス」を2026年5月にセブン限定・数量限定で発売(70ml・税込235円、製造は栄屋乳業)。チョコクランチには本場と同じ原料を使い、パッケージもハングルとターコイズブルーを前面に押し出して、「これ輸入品かな?」と見紛うレベルまで韓国の空気感を持ち込んでいます。日本の棚で、ここまで韓国語を主役にしたデザインは、なかなか珍しい。

ロッテの「JOEE グリークヨーグルト」シリーズ(水切りギリシャヨーグルト使用)も含めて、韓国で流行した「ヨアジョン(ヨーグルトアイス)」の波が、SNSとインバウンド旅行を経由して、すぐに商品化される。伝わる経路が、ぐっと短くなったことを示す好例だと思います。

アンデイコ ビヨットヨーグルトデザートアイス

⑤ ブランドコラボ「監修」がコンビニアイスの標準装備に

九州のご当地アイス「ブラックモンブラン」(竹下製菓)と、不二家ミルキーがタッグを組んだ「ブラックモンブラン milky」(194円)。これは西日本・関東で発売されました。竹下製菓はこの1年だけでもガンダム、ブラックサンダー、コメダ珈琲店と、ほぼ毎月コラボを連発していて、地場のアイスが全国区のコラボ常連へと変貌しています。

コンビニ×高級ブランドの監修合戦も、いよいよ激しくなってきました。セブンは鎌倉のメゾンカカオ姉妹ブランド「CHOCOLATE BANK」との4年目のコラボで、「ワッフルコーン ビター&ホワイトチョコレート」(429円)などを発売。さらに2026年1月には、ベルギー王室御用達の「ピエール マルコリーニ」監修「ショコラアイスバー」(60ml・税込298円)が、ファミマ限定でコンビニ初登場しました。

僕がここで言いたいのは、銀座のブティックなら1カップ600円~1000円超になるようなブランド体験を、コンビニなら300円弱で味わえてしまう、ということ。コラボは、価格の納得感をつくる装置になっているんですね。「高い」のではなく「お得」。生活者がそう感じられる仕掛けが、いまのコラボには組み込まれています。

竹下製菓 ブラックモンブラン milky

⑥ 新食感——食感そのものが、商品価値に

「お菓子とアイスの融合」と「食感のエンタメ化」が、今期のキーワードです。

ファミマの「アイスモア シューアイス」(228円・2025年9月)は、スモア由来のマシュマロ食感アイスを、チョコ掛けクッキーシューで包んだ一品で、即完売を連発。シャトレーゼ「チョコバッキー カジゴン」(108円)は、累計5億本の看板を「岩砕食感」を打ち出し進化させてきました。森永製菓「パキシエル」もついに1本(ノベルティ)タイプで登場。先端7mmの超厚チョコ製法で、パキパキ音の心地よさが根強い人気です。

僕がとくに興味深く見ているのが、市場全体で「バニラのような単一フレーバーより、お菓子素材入りのミックスフレーバーの方が売れる」という現象が起きていること。明治エッセルスーパーカップも森永乳業のMOWも、基幹のバニラより話題になります。各社は「単価が上がっても、素材感のあるフレーバーの方がお得だと思われやすい」と分析しているのでしょう。つまり値上げの時代には、食感や具材という“情報量”こそが、値ごろ感の源泉になっているのです。

そして、この「食感の革新」を黒子として支えているのが、栄屋乳業(アンデイコ)であることも、業界人として強調しておきたいところです。シューアイスで国内シェア90%超を誇り、銀座千疋屋まるでシリーズ、ビヨット、ピエール マルコリーニ、アイスモアと、今期の話題作の多くを製造しています。冷凍下でもねっとり・むちっとした食感を量産できる独自技術が、各ブランドの「らしさ」を、物理的に成立させています。表に出る名前の裏に、こうした職人がいる。これがアイス業界の面白いところです。

アンデイコ アイスモアシューアイス

⑦ ヨーグルト多様化——「どのヨーグルトを使うか」

今期、いちばん解像度を上げて見ていただきたいのが、ヨーグルトです。フレーバーが増えただけではありません。各社が「使うヨーグルトそのもの」で差別化している——この段階に入ったことが、本質的に新しい。少し並べてみますね。

明治「ブルガリア フローズンヨーグルトデザート」は、独自のLB81乳酸菌で発酵させています。シリーズ累計約1億本、発売以来で売上は約2倍。2025年は「アロエ」「冬の濃いめ」「濃い苺」(248円)と次々に拡張してきました。

赤城乳業の「Sof’ 岩泉ヨーグルト味」(194円・2026年5月全国)は、岩手・岩泉ホールディングス監修のブランド初コラボ。18〜20時間の低温長時間発酵で知られる岩泉ヨーグルトの“もちっと食感”を再現し、乳脂肪分を高めて濃厚に振っています。

栄屋乳業×日本ルナの「バニラヨーグルトクリーム味アイスバー」(ファミマ限定)は、1993年生まれ・32年愛される日本ルナ「バニラヨーグルト」を再現したもの。明治ブルガリアの「さわやかな酸味」とは真逆の、「まろやかな甘さ」で勝負。そこに、セブン×viyott(ビヨット)、ロッテ「JOEE」の韓国産ギリシャヨーグルト粉末を使用したグリークヨーグルトアイスが加わります。

ブルガリア菌か、岩泉か、ルナのバニラヨーグルトか、ビヨットか、ギリシャ産&グリークか。「ヨーグルトアイス」という大きなくくりではなく、 ヨーグルトの“銘柄”が商品の差別化軸になっています。人気になり、解像度が上がると、細分化が生まれる。まさにこの構図です。この背景には、健康志向(乳酸菌・たんぱく質・低カロリー)、韓国フードトレンドの伝播、そしてインバウンドで再評価される日本の発酵文化という、三層の追い風もあると見ています。

栄屋乳業 バニラヨーグルトクリーム味アイスバー

なぜ「アイスの価格が上がっても」ついてきたのか

7つのトレンドの根っこには、共通の構造があります。少し業界の事情に踏み込んでお話しします。

ひとつめ。コスト高が値上げを正当化し、結果として「価値の言語化」を促しました。 カカオの国際価格は2024〜2025年にかけて、2022年比でおよそ4倍(ピークでは約6倍)に高騰しました。生乳の取引価格も、2020年以降の累計でキロあたり24円ほど引き上げられています。砂糖・油脂・包材・物流費・人件費も軒並み上昇。これを受けて、明治はアイス20品を2025年9月に約5〜9%、ロッテや江崎グリコ、森永乳業も相次いで値上げに踏み切りました。各社が一斉に値上げしたことで、「アイスは高くなって当たり前」という消費者心理の地ならしが終わり、メーカーは堂々と付加価値を打ち出せるようになった。これが大きい。

ふたつめ。生活者が「メリハリ消費」へ移りました。 日常はしっかり節約しても、自分へのご褒美にはちゃんと払う。SNS映え、インバウンド需要(抹茶・ヨーグルト・和素材の人気)、健康志向、コンビニPBの高級化が互いに作用して、「300円のアイス」を心理的に正当化しているのです。

日本の「亜熱帯化」に合わせた商品

みっつめ。気候変動という、新しい変数が現れました。 2025年の夏は、気象庁の観測史上もっとも暑い夏でした。これまでは「暑いほど売れる」が常識でしたが、2025年度は「暑すぎて外出が減り、持ち帰る前に溶けてしまうから買わない」という機会損失すら生まれました。氷菓系が、とくに影響を受けています。そんななか、ロッテ「アジアに恋して」は、日本の「亜熱帯化」に着目、日本人の味覚もアジア地域で好まれる爽やかな酸味やスパイス、お茶の香りを求める傾向にあると分析から生まれた商品。暑さしのぎの氷菓というよりも、こうしたコンセプトをしっかりと捉えた満足度の高い、高付加価値・濃厚路線への傾斜は、じつに合理的です。

ロッテ アジアに恋して

これから注視すべき指標は、ひとつ、リッター単価が689円から先、700円台に乗るかどうか。これが「価値消費」定着の最重要シグナルです。ふたつ目は、ヨーグルトの銘柄コラボがどこまで増えるか。地方の名門ヨーグルトや韓国ブランドとの提携が、まだしばらく有効打になりそう。

全体の流れとしては、まず体験型・食感系で話題を取り、ブランド監修コラボで価格の納得感をつくり、ヨーグルトなどの機能性でリピートを固める。この三段ロケットが、2026年の王道になるでしょう。

念のため、いくつか補足を。発売年月や価格は媒体・店舗によって表記が揺れる場合があり、運営サイト「アイスクリームマニア」の記載と店頭表示を優先しています。「健康志向」「インバウンド」といった分析は、各社リリースや市場論評にもとづく僕の解釈であり、定量的に因果が確定したものではない点もお伝えしておきます。

アイスの単価は、確かに上がりました。それでも生活者は離れなかった。これは、値上げを「価値」へと昇華しきったメーカーの執念と、ご褒美にはちゃんと払う消費者の成熟が、見事に噛み合った結果だと思います。2025-2026年は、日本のアイスが「安さの商品」から「価値の商品」へと完全に脱皮した、記録すべきシーズンになりました。アイスクリーム業界の確変は、まだまだ続きそうです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。アイスマン福留でした。

Have a ICE day!!

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